観客のいない静かな決勝戦となってしまったが、とてもテクニカルで、私好みの試合でした。ということで久しぶりに1ラウンドから、試合内容をお伝えしようと思います。
<拳合新人王トーナメント2014決勝戦 >
スドウ選手対セリザワ選手
(第1ラウンド)
身長、リーチで上回るサウスポーのセリザワ選手に対して、一発屋のスドウ選手がどのように戦うかに注目していたが、始まってみると意外な展開となった。
どっしりと安定したガードで、堅固な陣形を組むスドウ選手が、じわりじわりとプレッシャーをかけると、精確なジャブでセリザワ選手を翻弄。制空権を支配したのはパンチャーのスドウ選手のほうだったのだ。
ジャブで優位に立つと思われたセリザワ選手には、難しい立ち上がりだったが、動きは悪くない。シャープな左ストレートやコンビネーションで対抗する。
拳合らしい緊張感のある攻防は本当に楽しい。
手に汗握る第1ラウンドは、両者ポイントを奪えずに終了する。
(第2ラウンド)
セリザワ選手は、練習してきた技を駆使して崩そうとするが、スドウ選手のディフェンスの成長が著しく、攻略することができない。打ち終わりにも素早くブロッキングするし、ぎこちないもののバックステップやサイドステップでミスブローを誘い出す。
均衡を破ったのは、そんな展開からだった。
セリザワ選手が連打で仕掛けた後に生まれた隙を逃さず、強烈なジャブで1本!
踏み込みの効いた鋭い一撃は、膠着した試合を大きく動かした。
それにしても、スドウ選手は、今大会で上手くなったものだ。それに加えてあのパワー!ジャブだけでセリザワ選手のガードが弾かれるほどの威力だ。
波に乗るスドウ選手が右ストレートを2連発してプレスをかけてから、またもジャブを決めて2本目を奪うと、敗色濃厚なセリザワ選手が、ここから粘りを見せる。
守勢に回らず、集中力を高めて高精度のパンチを繰り出すと、美しい弧を描いた左のクロスで鮮やかな1本を奪い返す!
しかし、傾いた流れを変えるにはもう一つ足りなかった。いや、この日のスドウ選手がグレートだったのだ。サイドステップで位置を変えながら、ジャブの軌道を確保して、3本目も完璧なジャブでフィニッシュ。
拳合新人王2014優勝は、スドウ選手に決定!
この瞬間、眠れる大砲が完全に覚醒した。